Asprovaの本音解説;見えてきた生産スケジューラの本性

ここ数カ月、生産スケジューラについて考えています。先ず初めに、Asprovaの会長さんが書いた「Asprova解体新書」をまな板に乗せ、好奇心、疑い、批判、期待、、など、入り混じった思いで斬ってみました。生産スケジューラに特有な誇大広告的説明に“うんざり”しながらも、厚化粧の下にある素肌もみえてきました。Asprovaだけか、、。日本には生産スケジューラベンダは他にもたくさんあります。Flexscheも調べてみました。美辞麗句の宣伝文句満載というあたりはAsprovaとさほど変わりはありません。

実は、今回、生産スケジューラについて調べようと思った直接の切っ掛けは、2年ほど前の2019年11月中頃、Asprovaより販売代理店募集の案内が届いたことです。日頃、疑問に思っていることを聞いてみるチャンスだと思い、いろいろと質問してみました。メールのやり取りで(11月中旬~12月末)、結構、正直ベースで応えていただきましたので、“すっぴん”の生産スケジューラの姿をみれるかもしれません。生産スケジューラに興味のお持ちの方には、参考になるのではないかと思います。

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黒字;私(佐々木)➡ Asprova(上村義孝コンサルタント部 部長)、

Asprova側CC受信者;高橋邦芳会長、田中智弘社長、藤井賢一郎副社長

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[Kenichiro Fujii様、2019/11/17]

ご案内、ありがとうございます。資料、拝読させていただきました。質問がございます。ご教示頂ければ幸いです。

<質問>スケジューリングのとき、生産ラインや工程(機械、設備、人)の稼働率が所要時間に及ぼす影響をどのように考慮しているのでしょうか。

[上村 義孝様、2019/11/18]

丁寧にお答えいただきましてありがとうございます。様々な変動要因を取り入れてスケジューリングできることがわかりました。

そのような変動(バラツキ)がスケジュールにどのように反映されるのか、について知りたいと思っております。ポイントを共有したいと思いますので、次のような事例で質問させてください。

生産ラインの途中のひとつの工程に注目します。その工程の正味平均加工時間は30分で標準偏差5分のバラツキがあります。稼働時間は8時間(480分)/日で、工程の加工能力は16個/日です。ある週(5日間)の生産個数は50個(平均10個/日、稼働率62.5%)、別の週は75個の生産が予定されています(稼働率93.8%)。前工程から流れてくる時間間隔の平均はそれぞれ48分(480÷10)、32分(480÷15)ですが、バラツキがありその変動係数はどちらも0.3とします。

このとき、どのようなスケジュールになるか、ご教示頂けると助かります。不足の条件等ありましたら、追加してください。

[上村 義孝様、2019/11/19]

ご説明ありがとうございます。

「Asprovaでは日産何個では無く、品目毎の1個当たりの製造時間を設定し品目毎の生産時間のバラツキ、、、、(中略)、、、、各設備に対して秒単位に山崩しして割り付ける事で算出します。」

とのことですので、次のように質問をさせてください。

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注文は1個ずつランダムな時間間隔で入ります。製造工程はひとつとします。平均製造時間は30分/個、バラツキは標準偏差;5分。工程正味稼働時間は8時間(480分)/日。工程前の仕掛はなし。段取り時間、処理順の制約もなし。

1、このとき、受注(=工程への投入)~完成までの時間はどうなりますか。(秒単位で計算されているようですので、秒単位で出てくるのでしょうか)

2、平均10個/日の注文がある日と15個/日の注文がある日で、受注~完成までの時間は同じですか? 変わりますか?

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[上村 義孝様、2019/11/19]

不躾な質問をして失礼いたしました。最近のスケジューラの機能を知りたかったもんですから、、、。気が付いた点、コメントさせて下さい。

処理時間(加工、組み立て、調整、、)や投入時間間隔にバラツキがあるとき、稼働率によって、待ち時間の長さが大きく影響を受けます。待ち時間は工程がビジーで非処理物が待っている時間と非処理物がなくて工程が手空き状態の時間の合計です。待ち時間がどのくらいになるかは、待ち行列理論に詳しく書いてあります。よく知られている式は、

待ち時間=ρ/{μ(1-ρ)}

ρは稼働率、μはサービス率(単位時間の処理数)

グラフを描いてみればわかりますが、稼働率が70%~80%付近から、待ち時間は急激に長くなります。μ=1、ρ=0.9で待ち時間は9となります。処理時間が1時間で、90%の稼働率なら待ち時間が9時間で、製造時間は10時間となることを意味します。10時間は平均値で、それにバラツキが加わりますので、影響はさらに大きくなると思います。

もうひとつ、厄介なことは、多くの場合稼働率は70%より80%、80%より90%と高い方を狙いますが、そうすると待ち時間が急激に長くなる不安定領域に入り、生産現場が混乱するきっかけとなることです。生産性向上を狙い、稼働率を上げようとすると生産リードタイムが不安定になり、現場が混乱し、生産性を下げる。

生産スケジューラには、この“落とし穴”に入るのを防ぐセーフティガードが付いていなければならないと思います。“落とし穴”にはまっていることにも気づかず、奮闘している現場をよく目にします。

[上村 義孝様、2019/11/21]

ご説明のポイントは次のようなことでしょうか。

「生産効率を上げる」ために

「ネック工程の効率化に着目してスケジュール」し、

「スケジューラで作業指示を提示する」

TOCのDBRの考え方を利用しているようですが、これはあまりうまくいかなかったんです。うまくいかない理由をいくつか挙げますと、

①ボトルネックと非ボトルネック工程の識別が曖昧

②ラインバランスを上げようとすると、稼働率の高い工程(ボトルネック候補の工程)が複数個所出てくる。バラツキがあると(多くの場合、多かれ少なかれ、バラツキはあります)、ボトルネックが動き回るようになる。

・・・・・・・(中略)・・・・・・・

⑧ボトルネックや組み立て工程でのスケジューリングを止め、出荷スケジュールだけにしたS-DBR(Simplified-DBR)を発表。現在はほとんどがS-DBR。

⑨S-DBRは「計画負荷」という概念で時間設定をしますが、かなり大雑把で、簡単な生産ラインにしか適用できない。

ざっと、説明しますと、上記のようなことなんですが、最も致命的な欠陥は、

「DBRはバラツキを認めているにもかかわらず、バラツキを許容した時の、稼働率と待ち時間の関係を見落としている」ことです。

「生産ラインの能力はボトルネック工程の能力で決まる。だから、ボトルネック工程の能力を“100%”絞り出せ」

これが、TOC(DBR)の“教え”なんですが、稼働率が100%に近づくと待ち時間は指数関数的に長くなり、スケジューリングで最も重要な“実行可能性”が保てなくなります(作業指示機能が低下する)。

御社のご説明をお聞きしますと、同じような見落としがあるように感じますが、いかがでしょうか。

[上村 義孝様、2019/12/08]

別件で、ちょっと、間が空いてしまいました。ポイントは、「スケジューラで作業指示を提示する」ことにあるように思います。

生産工程では、

「処理時間にバラツキがある時、作業時刻は確率分布する」

「従って、作業時刻を固定値で決めることはできない」

「稼働率により待ち時間は大きく影響を受け、作業時刻の確率分布も大きく影響を受ける」

という特性があります。これは物理現象ですので、どのような生産工程でもみられます。

このような現象を抑制するためにはバラツキを減らせばいいわけですが、大部分のバラツキの原因は生産工程の外部にありますので、そう簡単にバラツキはなくなりません。

「スケジューラで作業指示を提示する」ことが可能な条件は、“バラツキがある範囲以下”であることが、“絶対条件“となりますが、スケジューラーの説明に、そのような条件はどこにも見当たりません。

「生産計画の変更に柔軟に対応でき」、、等の説明が散見されますが、誇大広告になっていませんか。

スケジューラーに関しては、ここ数十年、まったく進歩していませんね。AI、IoT、、等、情報技術が進歩しているのに、相も変わらず「スケジューラで作業指示を提示する」という、非現実的な前提条件に固執しているのは、なぜなんでしょうか?

根本的に考え方を変える時期に来ているんじゃないでしょうか。

[上村 義孝様、2019/12/10]

「スケジューラーは、ここ数十年、まったく進歩していない」理由がこの辺りにあるんじゃあないでしょうか。いろいろな改善をこれまでもやってこられたと思いますが、「根本的には変わっていない」ということですね。将来、変わる(進歩する)可能性はありますか?つまり、いま手掛けている課題(スケジュール条件やスピード面で解決)が解決出来たら、「根本的に異なる(進歩した)スケジューラー」はできますか?

バラツキがない条件でも工程数が多くなると最適解が求められない(NP困難)ことはよく知られた話です。遺伝子アルゴリズムなどの近似解手法を使って、実用的に使えそうな“まし”な答えが得られた、という話は聞いたことありますが、NP困難が解決されたという話は聞いたとこありません。そんな話があるのでしたら、ご教示頂ければ幸いです。

「最適化」というのもくせ者。“単位時間当たりの生産数量を最大にする”、“生産リードタイムを最短にする”、“優先通りにつくる”、、、など、最適条件がいろいろあって、工場、製品、時と場合、、等で、異なります。どうやって、「最適化」を定義するんでしょうか?

「バラツキは外乱要因だけでなく人にも影響する部分がまだまだ多く、スケジュールで対応せず、逆に遅れている事を知らせて戻すような事をしているのが現状です。もし、戻せない時に再スケジュールするなどバッチ的な対応となっています。」とのことですが、バラツキがある場合はスケジュールでの対応ができない、とおっしゃっているのでしょうか?

[上村 義孝様、2019/12/30]

いろいろと教えていただきまして、ありがとうございます。Webをググっていたら、下記のような説明がありました。よくみたら、御社のWebsiteのようです。https://lib.asprova.com/ja/library/profits/350-mto-mts-combination.html

受注生産と見込生産の混合生産

Q: 工場の中で、受注生産品と見込生産品が混在して流れていますが、対応できますか?

A: 「受注・生産・購買のひも付け図」をご覧ください(前頁)。この中では、受注生産品をスケジュールすることもできますし、見込み生産品をスケジュールすることもできます。生産計画スケジューラは、受注生産品と見込生産品の混合状態をスケジュールすることもできます。以下のようなケースでも問題なく対処できます。

・ 見込み生産の中に、試作品が混合で生産される
・ 受注生産品に長納期購買品が使われる
・ 受注生産品に見込み生産の部品が使われる
・ 受注生産品と見込生産品に同じ部品が使われる
・見込み生産品が受注生産になった
・ 受注生産品が見込生産品になった

見込み生産と受注生産が混在した工場が多いのが実状です。生産計画スケジューラは、受注オーダ、製造オーダ、購買オーダをひも付けて、全体をスケジュールすることにより、受注生産、見込み生産などすべての生産形態を包含してスケジュールできます。

受注・見込みの混合生産を実現する上で、重要なことは、スケジュールが確定する順番は、受注、製造、購買の順とは限らないことです。購買が確定して、それが製造と出荷に影響することもあります。製造の一部が確定して、それが購買と出荷に影響を与えることもあります。実際、生産計画スケジューラは「受注・生産・購買のひも付け図」の中の受注、製造、購買、在庫がどのような順番で確定しても対応できます。この仕組みにより、生産計画スケジューラは、あらゆる生産形態、生産状況に適応できます。

「生産計画スケジューラは、あらゆる生産形態、生産状況に適応できます」

とあるんですが、これまでの上村様の説明から判断しますと、“ほんとかな?”って、疑ってしまうんですが、、。

一般の商品ですと、“あぁ~使っちゃいけない”、“こぉ~使ってはダメ”という注意書きがありますが、生産スケジューラはできないことまで“何でもできます”と、、。


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