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No.41 かんばん方式はもっと広く使えますよ

注文が来る時間間隔を10で一定、調達リードタイムを100で一定の条件で発注点方式とかんばん方式を比べてみました。詳細はNo.40をご参照ください。特筆すべき点は、発注点方式は、発注量(通常定量)を発注点より少なくできないのに対して、かんばん方式はそのような制約がないことです。原理的には発注量を1個にすることもできます。

受注間隔も調達リードタイムも一定という条件で比較しましたので、それらが変動する場合はどうか、という疑問はあるかもしれません。特に、「かんばん方式はバラツキが大きいと使えないんじゃないの?」という印象が強いと思います。バラツキを加えて比較してみましょう。

初めに、受注間隔の平均を10、その変動を指数分布、調達リードタイムは100一定で、発注点方式ではどうなるか、シミュレーションしてみましょう。

結果を比較しやすいように、欠品が出ない最小の在庫はどうなるかでみてみます。多少試行錯誤しましたが、発注点が18個、発注量も18個のとき、欠品ゼロで最少在庫となりました。在庫と発注残の合計のピークは36個となりました。得られた結果の一部を図1に示します。

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図1 受注間隔が指数分布、調達リードタイムは一定

次に、調達リードタイムを変動係数0.25の正規分布で変動させたらどうなるか、シミュレーションしてみました。結果の一部を図2に示します。発注点は20個、発注量も20個。在庫と発注残の合計のピーク値は40個となりました。

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図2 受注間隔が指数分布、調達リードタイムは変動係数0.25の正規分布

次に、かんばん方式について調べてみます。条件は発注点方式と同じです。先ず、受注間隔が指数分布で調達リードタイムが一定の場合をみてみます。シミュレーション結果の一部を図3に示します。欠品ゼロで最少の在庫は、この場合はかんばん枚数と同じですが、27個となりました。

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図3 受注間隔が指数分布、調達リードタイムは一定

調達リードタイムを変動係数0.25の正規分布で変動させた場合のシミュレーション結果の一部を図4に示します。かんばん枚数は34枚となりました。

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図4 受注間隔が指数分布、調達リードタイムは変動係数0.25の正規分布

在庫と発注残を合計したものとか、かんばん枚数は在庫補充の循環を満たすものなので、これを流動インベントリーと呼んでおきます。両者の流動インベントリーの結果をまとめてみると表1のようになります。受注間隔や調達リードタイムに変動がある場合でも、発注点方式よりはかんばん方式が優れていると言えます。また、発注点方式はこの条件がベストですが、かんばん方式ではかんばんの搬送間隔を狭めることで、発注点方式の半分程度の流動インベントリーにすることもできます。

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表1 発注点方式とかんばん方式の比較;流動インベントリー

かんばん方式は、もっともっと広く利用することができるんじゃないでしょうか?なぜ、使われないのか? なぜ、失敗例が多いのか、、、?

<付記>
計算で求める場合は次のようになります。
* 発注点方式;受注間隔;指数分布、調達リードタイム一定  調達リードタイム100、平均受注間隔10なので平均受注件数は10。受注件数の分散は10。  標準偏差は10の平方根で3.2。安全係数を2.5として、発注点は、10+2.5x3.2=18。最低発注量は18なので、18+18=36が流動インベントリーとなる。

* 発注点方式;受注間隔;指数分布、調達リードタイム;変動係数0.25の正規分布  調達リードタイム間の受注件数の分散は次のようになる。   受注間隔の変動による受注件数の分散+(平均受注件数の自乗)x(0.25の自乗)=10+100x0.0625=16.25。標準偏差は4。安全係数2.5で、発注点は10+2.5x4=20。   最低発注量は20なので20+20=40。

* かんばん方式;受注間隔;指数分布、調達リードタイム一定  調達リードタイム100、かんばん10枚まとめ時間100で補充時間は200。その間の平均受注件数は20。その分散は20で、標準偏差は4.47。安全係数を2.5として、最大受注量は、20+2.5x4.47=31。

* かんばん方式;受注間隔;指数分布、調達リードタイム;変動係数0.25の正規分布  調達リードタイムの変動による受注件数の分散は  (平均受注件数の自乗)x(0.25の自乗)=400x0.0625=25なので、受注間隔の変動に  よる受注件数(受注量)の分散20を加えて、45。標準偏差は6.7。安全係数を2.5とし  て、最大受注量は20+2.5x6.7=37

<注記>
1、 受注数量の分散は受注数量分散式(No.33参照)よりかんばん方式の条件を入れて変形した、次の式で計算しています。
     bunsan_shiki 
Vn(i)は受注間隔の変動による受注件数の分散

2、かんばん方式の方は、シミュレーション結果より計算値が大きく出ているが、これはシムレーションのデータ数(回数)が少ないためと考えられます。