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No.27 今の在庫理論は正しいのか?

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前回は、「在庫管理にはどこまでも予測が付いて回ります。切っても切れない」と嘆きながら、「第1種の誤り」という話になりました。在庫管理でも「第1種の誤り」って、あるのかな?

在庫理論で、かねがね、変だな、と思っていることをひとつずつ取り上げていきますか。巷の本によると、定期発注のときの発注数量を決める式は、次のように書いてあります。

発注数量=(リードタイム+発注サイクル)間の需要予測‐発注残‐在庫+安全在庫

本によって発注残の他に納入残があるものもあり、多少異なりますが基本は同じようです。
そして、安全在庫は次の式。

式

在庫も発注残も発注するときの在庫数量と発注残数量ということですので、数えればわかることです。で、不明なのが需要予測。需要予測が決まらないと発注数量は決められません。いろいろ、探してみましたが、需要予測の計算方法や求め方は、どこにも見当たりません。ご存知の方がいたら、教えていただきたいんですが、、。

で、みなさんは、需要予測んところ、どうやってますか?発注のたびに予測をしてますか?それとも、面倒なので、過去のデータの平均値を使っていますか?それとも、何かあったときだけそれを考慮して予測するとか、、。

確率を考えると、平均値が一番いいし、簡単だし。だったら、需要予測なんていわないで「平均値」といえばいいのに、、。なんで、「平均値」と言わないんでしょうね。「平均値」と書いてある本は見当たりません。

安全在庫を計算する式ですが、これも、こんなんでいいのかなー。需要予測の項が入っていませんので、需要の増減の影響を受けないってことですか、、。

ここから、少し、まじめに考えてみます。この発注数量と安全在庫の式の背後にある前提条件とは、何か? 先ず、需要の発生元の母集団を単一で変わらないものとしているかどうかをみてみます。

安全在庫を需要予測とは無関係に一定にしているということは、母集団は変わらない、とみているのではないかと。発注数量を決める式ではどうか。母集団が同じなのか、変わったのかどうかの判断は行っていませんので、母集団は同一である、という前提であると考えられますが、、。

母集団が同一であれば、(リードタイム+発注サイクル)の将来の時間間隔でも母集団は不変。であれば、その間の需要予測で最も確率が高いのは、母集団の平均値になります。

需要予測を行うことは、平均値よりも確率の高い値がある、という前提になりますが、母集団が同じだという前提に立てば、平均値よりも確率の高い予測値は存在しないわけです。つまり、需要予測を行うということは、母集団が変わっていないのに、変わったと考え、予測という対策を打ったと言うことになります。

これが、同一母集団であるにもかかわらず異なる母集団に属しているとみなす「第1種の誤り」。つまり、現在の在庫理論は「第1種の誤り」を奨励しているというか、含んでいるというか。誤りを是認しているわけですから、あまり精度は良くないわけです。

と言っても、ピンとこないかもしれません。シミュレーションで確かめてみましょう。次の条件で。

* 平均受注数量;60個/日、標準偏差;22
* 調達リードタイム;4日、固定
* 発注サイクル;2日、固定の定期

次の2つのケースで行います。ケース1は現在行われている一般的な発注方法を想定しています。ケース2は、受注数量予測値を平均値、この場合  一定とします。

ケース1;受注数量と同一分布形状から無作為に抽出した値を(調達リードタイム+発注サイクル)間の受注数量予測値とする。補充発注数量は次の式で求める。
補充発注数量=受注数量予測値-発注残-在庫+安全在庫

ケース2;調達リードタイム+発注サイクル)間の受注数量予測値を360個一定で、補充発注数量は次の式で求める。
補充発注数量=360-発注残-在庫+安全在庫

図1にケース1とケース2の在庫の推移を示します。両者とも欠品が起きない最少の在庫です。この時の安全在庫はケース1では344個、ケース2では224個です。図2は両者の在庫分布です。ケース2の方が在庫は少ないことがわかります。

在庫

図1 在庫の推移

在庫

図2 在庫の分布

なぜ、ケース2の方の在庫が少ないか、おわかりですね。ケース1は「第1種の誤り」が含まれていますが、ケース2はそれがありません。両者の差は、俗に予測誤差といわれているものです。

毎回、予測なんかしないで、平均値を使ったほうが在庫は少なくて済む。その方が簡単ですしね。これなら、明日からでもできそうですね。で、おおよそ20%~30%の在庫が減ると思います。在庫は減らさないで欠品率を下げるのもいいでしょう。

間違わないで頂きたいのは、補充発注数量が毎回一定の数量だ、ということではありません。補充発注数量=360-発注残-在庫+安全在庫で求めた数量です。発注残と在庫数量が発注毎に変わりますので、補充発注数量も毎回異なる数量になるのが普通です。

今の在庫理論、正しいのか、正しくないのか、、、。