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No.16 直列バランスライン-5工程と10工程の比較

前回は、バランスラインとボトルネックラインをFITチャートとTIPチャートを使って比較してみました。C-WIP以上では、 WIPが同じであればボトルネックラインもバランスラインも生産率、フロータイムはまったく同じ。 C-WIP未満ではボトルネックラインの方が生産率は同じもWIPが少なくてすむ領域がある。ボトルネックラインでは、 ボトルネックがどこにあっても生産率とフロータイムは同じ。しかしTIPチャートでみると違いがある。ということでした。 考えてみれば当たり前の話なんですが、「あれっ」と、一瞬、考えてしまったりします。

今度は、工程数が異なる場合を見てみましょう。1工程の処理時間が10分の10工程直列バランスラインと1工程の処理時間が20分の5工程直列バランスラインの比較。 どちらもまったく同じ製品をつくるラインだとします。何が違って、何が同じなのか?

10工程ラインの工程1と工程2を5工程ラインでは工程1で、工程3と工程4を工程2で、、、処理するとします。10工程ラインの工程1は機械Aで10分、 工程2は機械Bで10分処理します。5工程ラインの工程1は機械Aと機械Bの処理を機械ab、1台で処理します。時間は20分かかります。以下同様です。図1を参照ください。

10工程と5工程多淫

図1 10工程直列バランスラインと5工程直列バランスライン

この2つの生産ライン、どちらが良いと思いますか? 投入から完成までの時間はどちらも100分です。仕掛は工程間に溜まることが多い、 ということを考えれば10工程ラインより5工程ラインの方が良さそうです。ここでは機械の値段は考えないことにしましょう。生産能力はどちらが高いんでしょうか?  5工程ラインの方かな? うーん、、やっぱし同じかな? もしかして、10工程ライン?、、、

これをFITチャートでみてみましょう。10工程直列バランスラインのFITチャートは前に示してありますので、5工程直列バランスラインのFITチャートを作ってみます。

C-WIPを求めてみます。

生産率

WIP<C-WIPでの生産率とフロータイムは次のようになります。

生産率

FT=処理時間合計=100 (分)

WIP≧C-WIPでの生産率とフロータイムは次のようになります。

生産率

FT=WIP x 1工程の処理時間 (分)

これを図示すると、図1の赤線のようになります。黒線は10工程直列バランスラインですので比較してみてください。C-WIPが5以下は同じですが、 それを越える領域では5工程直列ラインの生産率は低くなり、フロータイムは長くなります。少しの差ではないですね。みなさんの直感と合っていますか? 

FIT

図1 5工程直列バランスラインと10工程直列バランスラインのFITチャート

工程の間に仕掛が溜まるので、工程と工程を直結してそこに仕掛がたまらないようにする、という仕掛削減対策。たびたび聞いたことがあります。 2つの工程を1つの工程にまとめるとき、処理数が常に1個という条件にすると、このようなことになります。改善どころか、改悪ですね。FITチャートでみると、 このような落とし穴もみえるようになります。

今度は、5工程直列ラインの各工程の処理時間を10分としてみます。C-WIPを求めてみます。(単位は省略)

C-WIP

WIP<C-WIPでの生産率とフロータイムは次のようになります。

生産率

FT=処理時間合計=50

WIP≧C-WIPでの生産率とフロータイムは次のようになります。

生産率

FT=WIP x 1工程の処理時間

C-WIPは1工程の処理時間が20分のときと同じで、5個です。生産率はWIPが10個以上では10個/100分で同じですが、10個未満では図2に示すように、 WIPが5個でも生産率が10個/100分で、5個未満の領域でも高くなっています。フロータイムも同様に5工程ラインの方が短くなっています。 これはみなさんの直感と合っているのではないか、と思います。

FIT

図2 各工程処理時間が10分、5工程と10工程の直列ラインのFITチャート

図3は各工程処理時間10分と20分のTIPチャートの一例です。FITチャートとTIPチャートとの接点は、例えば、各工程の処理時間10分場合、 WIPが6のときTIPチャートでP5終了時間は60分、FITチャートではWIP6でのフロータイムが60分となっていることです。

TIP

図3 5工程直列バランスライン 各工程処理時間10分と20分のTIPチャート

FITチャートとTIPチャートで生産ラインのすべての特性を捉えることができるわけではありませんが、生産ラインの主要かつ重要な特性である生産率、WIP、 フロータイムおよび各工程の通過時間を立体的に捉えることができます。そうすることで、生産ラインの全体を俯瞰し、どのような管理を行えば良いか、 その方向性がみえてくるのではないかと思います。そのイメージの一旦を感じていただければ、と思います。