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No.106 経験則から学ぶモノの流し方の法則

生産工程でのモノの流し方は時間指図が一般的。当り前のことのようなんですが、そうではない。時刻・時間ではうまく流れをコントロールできない、というのが前回の話。

時刻・時間がダメなら、何で工程の流れをコントロールすればいいのか、これが今回の課題。

ある工場の生産現場を見てみましょう。

大枠の生産計画はありますが、ワークごとに開始時刻を気にして処理を始める作業者なんていません。作業が終わったら工程前にある仕掛からワークを取り処理をします。仕掛がなければ流れてくるのを待つとか、前工程に取りに行くとか、整理整頓をするとか、、。この繰り返しです。仕掛が複数ある場合は早く到着したワークから処理します。これをFIFO(First In First Out)と呼んでいます。各ワークの指定開始時刻も終了予定時刻もありません。こんな感じのところが多いんじゃないでしょうか。

この流し方、「モノが流れてきたら直ちに作業に取り掛かり、終了したら直ちに次工程に送る」というDBR(ドラム・バッファー・ロープ)の「ロードランナー方式」と同じです。

*FIFO
*ロードランナー方式

これが多くの生産現場で行われているモノの流し方。直接、時刻・時間で作業を統制してはいません。

どの工程も、つまりボトルネック工程も非ボトルネック工程も、この流し方でいいのでしょうか。DBRでは非ボトルネック工程の流し方は「ロードランナー方式」、ボトルネック工程は時刻・時間指定のスケジュールに従って流します。

非ボトルネック工程は、FIFO・ロードランナー方式でよさそうですが、ボトルネック工程はこれでいいのでしょうか?

思い出してください。工場改善小説「ザ・ゴール」の巻末にある後書を。

『ザ・ゴール』を読み、その内容を実行しただけの工場のほうが、スケジューリング・ソフトを採用したクライアントより高い成果を上げてしまったのだ。それもはるかに短い期間にである。

スケジューリングではなく「ザ・ゴール」に書いてある通り実行した、とは、どのような方法だったのか。小説にはいろいろなことが書いてありますが、ポイントを抜き出せばFIFO・ロードランナー方式だと解釈できます。

結局、ボトルネック工程も非ボトルネック工程も、つまり、すべての工程での流し方は、
*FIFO
*ロードランナー方式
だ、ということになります。

えらく簡単になりましたね。でも、これですべてOK、というわけにはいきません。現実の生産環境では、突然、特急注文が入ったり、納期に間に合うかが気になったり、、そうそう、受注生産と見込生産の違いもあるし、そのような条件をどのように扱えばいいのか、課題はまだまだいっぱいあります。

この課題を扱うのに二つの選択肢がありそうです。ひとつは、FIFO・ロードランナー方式をご破算にして、さまざまな条件をテーブルの上に広げて、それらの条件を満たすような方法をみつける。もうひとつは、FIFO・ロードランナー方式をベースに、さまざまな条件をこなす機能を付加していく。

私の経験則に従えば、直観的に、後者でいけるんじゃないか、と。ダメならやり直すだけ。

ということで、FIFO・ロードランナー方式を基本条件として、さまざまな条件を満たす機能を追加する、という方向で検討してみます。

FIFO・ロードランナー方式で流すとき、重要な要素があります。それは、生産ラインへの投入順序です。FIFOですから、最初に投入したワークが最初に完成することになります。最後に投入したワークは最後に完成する。キーワードは順序。

特急オーダが入ったらどうしましょうか? 生産ラインの投入口にオーダが並んでるとしたら、その列の一番前に特急オーダを置き、すぐに投入できるようにする。まぁ、常識かな。生産ラインに投入された後は、どうしますか?

製造現場でよく見る光景は、持ち回り担当者を付け工程の処理が終わったら直ちに次の工程に持っていくという方法。工程前に仕掛があっても、それは後回し。特急オーダを優先します。究極の優先処理は、工程が処理中でもそれを中断して特急オーダを処理するっていうやつ。ここまでやるかどうかは状況によりますね。

この方法はFIFOのルールに追加することでできそうです。

で、それで納期は守れるの? という課題が残ります。この課題は、ちょっと、複雑そうですね。納期を基準にオーダをみれば、納期遵守の余裕度はいろいろ。十分な余裕のあるオーダもあればどうみても間に合いそうにないオーダもあります。急げばいい、というものでもないでしょう。そのようなことを全部含めて考えてみる必要があるでしょうね。

納期管理で重要な時間は投入から完成までの生産リードタイムと投入前で待つ時間。何月何日に(何月何日までに)納入してほしいという客の納期に間に合うかどうかは、受注確定後、完成までにかかる時間がどのくらいか、を知る必要があります。

ここで、ちょいと、待った!

「時刻・時間で工程を管理することができない」
だから、
「FIFO・ロードランナー方式」、
つまり、時間ではなくて順序で制御する、ということで進めてきましたが、生産リードタイムとか納期とか、時間がでてくる。これまでの生産管理は作業も時間管理、アウトプットも時間管理と次元が合っていました。工程の管理を時間から順序に換えて、アウトプットの時間管理ができるの?っていう疑問が出てきますよね。

これって、生産管理が抱える根本的な問題かもしれません。生産現場では分、秒単位の時間管理を行っている。一方、モノの流し方は経験豊富なベテランの指示で行う。現場の分、秒単位という時間と生産リードタイムとか納期という時間との間に、ベテランの経験則という非時間次元が入っている。ですから現場の細かな時間管理とアウトプットの時間管理は分断されているんです。

作業時間など分、秒単で管理する項目もありますが、流れの管理は経験則で行っているのが現状。その経験則をFIFO・ロードランナー方式に換える、ということです。流れの管理を時刻・時間で行うことはできないから、実際は、経験則で行っているっていうことです。よろしいですよね。

もうひとつ、現行の工程管理の問題点を申し上げておきます。客の納期に間に合うかどうかを言うとき、「間に合う」か「間に合わない」かの二者択一ですよね。「70%の確率で間に合う」とか、「間に合う確率は20%以下」とか、納期達成を確率で言うことはありませんよね。

工程はベテランの経験則をベースにおこなっているので、その結果である生産リードタイムとか完成時刻とかは精度よく出せないわけです。これが現在の生産管理の限界のひとつです。

できれば、この問題も解決したいんですがねぇ~。

課題、問題が次々出てきます。次回、もっと突っ込んで考えてみましょう!