生産ラインの背後で暗躍する“影武者”にお気付きですか、、

前回、“DX時代に「トヨタ生産方式」は増々強くなる” と申し上げました。

では、「トヨタ生産方式」を導入できない企業はどうするか。

昨今のDXブームの流れの中では、「トヨタ生産方式」だからどうの、こうのという見方はないようですが、「トヨタ生産方式」の特徴を浮きたたせてみれば、DXとの相性がすこぶる良く、「トヨタ生産方式」は増々強くなるのではないか。であれば、“「トヨタ生産方式」を導入できない企業は相対的に弱くなる”。じゃぁ、どうするか。

DX関連の情報があふれていますが、製造業を「トヨタ生産方式」で区別して論じている例はほとんどありません。ひっくるめて製造業はどうなるか、という視点がほとんど、です。肯定、否定、楽観、悲観、問題提起、方向性提案等々、、いろいろ、様々な見方、意見、考え方、、が飛び交っています。

おおむね、“チャンス到来”的な論調が多く、それはDX推進側の宣伝文句の影響も受けているのでしょう。需要などのビッグ・データ、そして生産現場のあらゆる情報を常時監視、解析して、工場の生産性が最大になる条件を瞬時に出す。それを支えるのが5G(そして数年後には6G)、発達著しい“AI”、、などのIT技術だ、と。

これまでも生産・工場管理に関する新しい提案、ブームは幾度となく巻き起こりました。MRP、MRPII、TOC、APS、TPS(トヨタ生産方式)、一気通貫生産方式、、規模の小さいのも含めるともっとあります。いずれもがIT技術の影響を受けてきました。IT技術の進歩とともに、それぞれの製造・生産管理の方法もブラッシュ・アップされてきています。

ではDXはそれぞれの製造・生産方式にどのような影響を与えるのか。私のテーマも巷のテーマと同じで、製造業をひっくるめてDXとの関係がどうなるかがテーマだったんですが、“DX時代に「トヨタ生産方式」は増々強くなる”なんていう、ちょっと的外れ的な見方から入ってしまいましたので、混乱したかもしれません。議論の本流を確認してみます。

“DXはそれぞれの製造・生産方式にどのような影響を与えるのか”

テーマ自体は壮大で難解。どこからどう手を付けたらいいか。書いてる本人も途中でわからなくなる危険性、大。だったら、わかりやすさを追求すべき、、と思いめぐらしているうちに浮かんできたのが「トヨタ生産方式」という切り口です。DXと「トヨタ生産方式」との相性の良さが際立ちました。

前置きが長くなってしまいました。冒頭の問題提起に戻ります。

「トヨタ生産方式」を導入できない企業はどうなるの?

「トヨタ生産方式」を再現できない企業は、DXとの相性が良くない、いや、悪いんです。どうしようもなく悪い企業が大部分。中には、DXによって改善する企業もあるかもしれませんが、ごく一部。例外です。

なぜ、「トヨタ生産方式」を再現できない企業は、DXとの相性が良くないのか。

では、「トヨタ生産方式」を再現できない企業がDXとの相性が良くない理由を解きほぐしていきたいと思います。実は、理由はいくつかあって、因果関係の強弱もそれぞれ。理由を挙げすぎると返って分かりづらさが出てきて、議論の“切れ”を悪くしてしまいます。

ということもあって、ここでは、DXとの相性が悪い理由を“ひとつ”だけ、挙げます。

“ひとつ”だけ、ですので、決定的な理由になります。そして、そして摩訶不思議なことに、生産管理・工場管理とDX関連の議論にはほとんど出てきません。“盲点”って、言うんでしょうか?

実際は、ときどき、ちらっと、顔を出すんですが、議論の主題に登ることはありません。影武者みたいなもんですね。黒幕っていう言い方もありますが、、。ですから、気が付いている人はいますが、大部分の人はご存知ありません。生産管理・工場管理関係のコンサルタントの方々も、大部分、ご認識がないようです。

えっ、えっ、えっ。だったら、「トヨタ生産方式」はどうなってんの? 「トヨタ生産方式」の裏にも影武者がいるんじゃないの?。そうです。もちろんいます。しかし、平準化や同期生産など「トヨタ生産方式」の手法によって、影武者も黒幕も、事実上、裏に隠れて小さくなったまま。その影響はほとんど出てきません。

「トヨタ生産方式」を再現できない企業では、この影武者が暗躍しています。表からはみえません。生産現場では混乱が常態化し、喧々諤々の議論が続きますが、黒幕に気付くことはありません。指導を仰いだコンサルタントも、黒幕の存在を認識していませんので、解決できません。

最も根本的な問題は、生産・工場管理に携わる関係者(コンサルタントも含めて)が影武者の存在に気付いていないことです。

認識されていない問題は、DXでも解決できません。

では、影武者の正体を認識したら、それをDXで処理できるのか。

答えは、「Yes」 and 「No」。

先ず、「No」の理由から。

  1. 数理モデルが限られている(使える統計理論がない、確率計算が困難)
  2. 時間遅れがある
  3. 特性が非線形である

・・・だから、DXでも処理が難しい、、

「Yes」の理由は、

  1. 生産環境の詳細データの常時収集が可能
  2. 過去のデータを蓄積、AIで分析→現状データから予測可能
  3. シミュレーションが可能(予測、意思決定、、)

・・・なので、DXで有効な処理ができる、、

影武者の正体を明かさずに論を進めていることをご容赦願います。問題の本質を分かりやすく説明するための奇策と受け取っていただいてかまいません。

影武者は多くの、いや、すべての生産現場に存在します。影武者の暴れ方には程度の差があります。暴れ方を抑える方法もあります。その一つは「トヨタ生産方式」です。しかし、ほとんどの企業は「トヨタ生産方式」を再現することはできません。大部分の企業は、影武者と共存するしかありません。

影武者とうまく付き合っていく。そのためには先ず、影武者の正体を見極め、その特性・特徴を理解することです。次に、それを制御するためにDXをどのように利用すればいいのか。MRP、MRPII、TOC、APS、、などこれまでもIT技術を利用してきましたが、影武者を認識している様子はありません。これまでと同じようなアプローチでは影武者とのお付き合いはうまくいかないでしょうね。まったく違った視点を持つ必要があるのではないでしょうか。

宇宙論の世界では、姿は見えないが質量がある“ダークマター”っていうの、よく聞きますね。生産現場に暗躍する影武者と、なんか、似ていますが、こちらの方は、素性・現象はわかっていますので、、。ただ、生産管理・工場管理に関係する方々にあまり知られていないため、DXという流れに乗れず、いや、逆に大きな混乱を引き起こすのではないか、、なんて、危惧するわけです。

このBlogをお読みの方には影武者って、何者か、うすうす、お気づきのことと思います。次回をお楽しみに、、


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