「日本のものづくりが危機状態にある」原因とは?

製造時間でなく待ち時間(滞留時間)を短縮しよう


という記事(ブログ)をみつけました。執筆は本間峰一氏。生産管理・工場管理関係の改善コンサルタントをしている方です。出版書籍多数。月刊「工場管理」に連載記事があります。

彼はかねてから、生産リードタイム短縮に関する情報を発信しています。主張の骨子は、

  • 生産リードタイムの内訳は20%が製造時間(処理時間)、80%が待ち時間
  • 従って、生産リードタイムを短縮するためには待ち時間を短くすることが効果的

ということで、「製造時間ではなく待ち時間を短縮しよう」と、、。

生産リードタイムに占める待ち時間の割合については、前回のBlogでも触れました。

「トヨタ生産方式をトコトン理解する辞典」山田日登志著、1988年1月初版の69ページにこんな説明があります。

改善必要点の発見

加工時間の改善より停滞時間の改善

生産リードタイム=加工時間+停滞時間

  トヨタ    =1:300

一般の会社    =1:5000

数字はいろいろありますが、生産リードタイムの中で待ち時間(滞留時間、停滞時間)が占める割合が非常に大きい、ということは30年以上も前から言われていることです。ですから、「製造時間ではなく待ち時間を短縮しよう」という彼の主張は新しくもなんともないんですが、生産リードタイムの短縮という枠で捉えれば、これは、生産管理・工場管理・現場改善の永遠のテーマ。時代とともに生産環境も変わり、生産技術、IT技術も進化する中で「待ち時間の短縮が重要」というメッセージは、もしかすると何か新しい技術かアイディアなどが含まれているのではないか、という期待が沸きます。

ブログの一部を抜粋します。

読者の皆さんは工場の製造リードタイム(工場に製造開始を指示してから出来上がるまでの期間)はどうすれば短くなると思われますか。大抵の人は製造現場の製造作業を効率化して製造時間を短縮すればいいと考えます。

しかし、この考え方は適切なアプローチとは言えません。一般的な工場では、人や機械が実際に製造している時間は製造リードタイム全体の20%程度しかありません。残りの時間は製造工程(製造設備)が空くのを待っていたり、製造工程に製品が届くのを待っていたりする待ち時間です。いくら現場が努力して製造時間を短くしても製造リードタイムはそれほど短くなりません。製造時間よりも工程間の待ち時間を減らした方が劇的なリードタイム短縮が実現できます。

ところがこのことを理解して改善活動をしている工場は思いのほか少ないです。やたらと製造時間短縮にこだわっている工場はよくありますが、工程間待ち時間を分析して改善活動に活用している工場は限られます。

私自身の関心事は、待ち時間の分析をして待ち時間の短縮を実現する技術、メカニズムです。論理的な裏付けがしっかりしていれば、画期的な手法になりえます。このブログをきっかけに、本間峰一氏にメールで聞いてみました。初めは私の質問の主旨がうまく伝わらず、議論がかみ合わないところが多々ありましたが、全体としては真摯に対応していただいたと思います。

何度か同じ質問を繰返し、また視点を変えるなどして、なんとか彼の考えを引き出せたと思います。

残念ながら期待した新しい技術、アイディア、知見などはありませんでしたが、重要な発見がありました。それって、、。

ブログ中にこんなコメントがあります。

最近日本のものづくりが危機状態にあるという話がよく出てくるようになりました。

重要な発見とは、「最近日本のものづくりが危機状態にある」原因の一端を垣間見ることができるかもしれない、ということです。それぐらい重要なことですので、彼のメールでの説明を引用しながら、技術的・論理的に、また日本のものづくりの歴史的背景なども交えて、多面的にじっくりと分析してまいりたいと思います。


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