「生産マネジメント入門Ⅰ」を読んでつのる“もやもや”

藤本隆宏教授との意見交換や「現場から見上げる企業戦略論」で感じた違和感、それは待ち行列現象についての説明がまったくないことです。藤本教授著の別の本も調べてみることにします。

「生産マネジメント入問Ⅰ」(2001年6月発行)があります。マネジメント・テキスト、[生産システム編]という副題がついているので、教科書的な雰囲気がします。目次をみますと、「第6章・納期と工程管理」があり、同章に「待ち行列問題」というコラムを見つけました。

「あるじゃないですか! 待ち行列問題」。

「待ち行列問題」の取り扱い方

さっそく調べてみましょう。ただ、そのコラムに直接行く前に、「待ち行列問題」を取り上げる背景というか、話の流れみたいなものを知っておいた方がいいと思いますので、「第6章の6―生産期間と在庫の概念」あたりからたどってみたいと思います。

在庫の機能として以下の5つを挙げています。

そして在庫システムとして2つのタイプがあると説明しています。

本書p215の図6.16 主な在庫システムのタイプ を引用します。

藤本教授はこのように在庫管理システムの概要について説明し、「生産期間短縮のカギは、在庫システムの改善、在庫削減にある」と指摘します。本書で生産期間とは、生産リードタイムのことで、原料が納入されてから出荷まで、ここではラインオフまで、と考えておきます。

そうしますと、「生産期間;原料が納入されてから出荷までの期間」をカバーする在庫管理システムは、図6.16に沿って、次のようになると解釈されます。

独立需要―原材料在庫―定量、定期発注方式

従属需要―生産ライン内(工程間)―MRP、かんばん方式

「待ち行列問題」については、

と説明しています。こんな説明もあります。

ザックリとまとめると、

下記のように要点をまとめてみました。

*トヨタ自動車の生産調査室が1970年代後半に試算したところでは、もの造りでトップクラスのメーカー(トヨタと思われる)でも、情報受信時間は生産期間全体のせいぜい200~300分の1、普通のメーカーでは2000~3000分の1に過ぎない。

*生産期間短縮のカギは、在庫システムの改善、在庫削減にある

*独立需要―原材料在庫―定量、定期発注方式

*従属需要―生産ライン内(工程間)―MRP、かんばん方式

*在庫システム問題では、需要の発生がある程度予測できることを前提にした。しかし、ハンバーガーショップのカウンターや銀行の窓口のように、顧客の到着パターンと要求内容がランダムで予想がつかない場合、顧客の待ち時間をどのように予測し、対応策を立てるか? これをオペレーションズ・リサーチでは、「待ち行列問題」という。

*基本構造は同じだが、待ち行列問題では、インプット(顧客の到着ベース)、アウトプット(顧客の要求による)ともに企業側でコントロールできず、不確実性がともなう。「EOQ」問題では、インプット、アウトプットともに不確実性なしを前提にするし、「安全在庫」問題でも、アウトプットはある程度不確実だがインプットは決定論モデルである。しかし、待ち行列問題では、インプット、アウトプットともに、確率的に与えられる。つまり、EOQ問題も安全在庫問題も決定論モデルであるが、待ち行列問題は確率論モデルなので適用しない(orできない)と解される。

さらにポイントを絞ってみます。

*正味作業時間:生産期間、トヨタは1:200、普通のメーカーは1:2000。つまり、普通のメーカーの正味作業時間に対する生産期間はトヨタの10倍である。

*EOQ問題も安全在庫問題も決定論モデルだが、待ち行列問題は確率論モデルなので適用できないと考えているのか?

「待ち行列現象についての説明がない」理由はなんとなくわかりました。で、二つほど疑問点が、、、。

かんばん方式を解決策に挙げているが、トヨタ生産方式(かんばん方式)を再現できた企業はごくわずかだ、という現実がある。かんばん方式導入実現の具体的方策への言及がないままで、

*対トヨタ生産期間比10倍の差を解消できるか?

また、一般の生産ラインの工程間には、「かんばん」のような在庫管理システムもなければ機械的な連結機構もないところが大部分である。決定論モデルで、

*連結機構なしの工程間仕掛・在庫をどのように管理するのか?

という疑問が残ります。在庫の種類と役割で挙げられた5項目を駆使して、なんとかやれ! ということなのでしょうか。もやもやはつのるばかり、、、


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