業務改善コンサルタントの手法

本間峰一氏は月刊工場管理に記事を連載し、また多数の関連書を執筆しております。日本を代表する改善コンサルタントの一人であり、 “危機的状態にある日本のものづくり”を救ってくれるのではないかとの期待とともに、その言動に注目が集まっています。

メール交換を通して彼の“生産現場の業務改善手法”の一端を覗いてみたいと思います。

メールの一部を抜粋します。(本間氏のメールの公開はご本人の了承を得ております)

コンサルの最初の手順として最大値(異常滞留)の発生原因を分析してつぶしておく必要がある。業務改善コンサルなら当たり前のアプローチだと思います。

異常値について、本間氏の説明のポイントをまとめますと、

●異常値(最大値)の特徴

  • 1カ月~半年以上滞留
  • 異常値が大きすぎて平均値が使えないので、中心値(中央値のこと?)で比較する
  • 通常の滞留は中心値ですので、異常値とは処理時間の何倍ではなく通常の滞留実績時間(中心値)の何十倍という数字です

●異常値原因

  • 故意にストップさせた、伝票処理ミス、、などの“属人的なもの”である
  • 状況;大企業ほどこの結果確認作業をしていないことが多く、信じられないような異常値が放置されている。但し、滞留させたからといって納期遅れにはつながらない

で、対策は、

●異常値対策

  • 属人的な異常値の原因を洗い出してつぶすだけでもかなりの時間がかかる
  • 的外れにならないように必ず改善による結果数字を確認する
  • 原因の多くが属人的なものが多いので地道に皆でデータを見ながら話し合うのが筋

「原因の多くが属人的なものが多いので地道に皆でデータを見ながら話し合うのが筋」って、すごく日本的ですよね。「皆で話し合って答えをみつける」・・・昔の小集団活動を思い出します。異常値の原因の大部分が属人的なものだとすれば、「皆で話し合って答えをみつける」というアプローチは理にかなっているように感じられます。グループ、関係者の協力が重要なのも同意できます。

戦後、日本の製造業が右肩上がりの時代に形成された現場改善の規範といってもいいでしょう。

また、生産現場の“管理”という視点からみると、きちんと管理されていれば出るはずのない異常値。それが出るということは管理に欠陥があるのではないか。そして一番目に付きやすいのが異常値。異常値を手掛かりにすることで管理状態を手っ取り早く、効果的に維持できる・・・。

コンサルの最初の手順として最大値(異常滞留)の発生原因を分析してつぶしておく必要がある。業務改善コンサルなら当たり前のアプローチだと思います。

本間峰一氏が「当たり前のアプローチ」だと主張する根拠は、モノづくり日本の歴史を背景からみて、また生産現場の管理状態の維持向上という面からみても、納得できることでしょう。

本間氏だけではなく、多くの業務改善コンサルタントも、日夜現場で奮闘する方々も「当り前のアプローチ」として受け止めているのではないかと思います。

で、このアプローチで対策の効果は、つまり、待ち時間が劇的に短くなったのか、が気になるところです。

本間氏が実際に指導した沖電線の事例では、受注生産品の全体リードタイムが90日から40日弱に短縮したとのこと。営業の受注活動~生産計画~生産~納品までの全体リードタイムなので、課題としている工程間の待ち時間がどのぐらい短くなったのかはわかりません。参考データとして認識しておきます。

その他に工程間の待ち時間がどの程度短くなったか、再三聞きましたが、具体的な説明はありません。

では、本間氏の主張する「当たり前のアプローチ」で待ち時間が短くなる論理的根拠は何か。定量的な説明を求めました。私が知りたかったポイントはここにありました。

本間氏の応えは、

  • 最初に企業の管理レベルが十分でないというお話ししましたが、定量的な問題を議論するような状況ではない工場がほとんどです。
  • 異常値が大きすぎて平均値が使えないので、中心値で比較するようになりました。それでも中心値が異常値に影響して長くなりがちです。属人的な異常値の原因を洗い出してつぶすだけでもかなりの時間がかかります。
  • 的外れにならないように必ず改善による結果数字を確認するようにします。組織が細分化されている大企業ほどこの結果確認作業をしていないことが多く、信じられないような異常値が放置されています。ただ、このフェーズのコンサルができるデータが得られない工場の方が多いのが実状です。

まとめますと、

  • 管理レベルが十分ではないため、定量的な議論をできる状態ではない。
  • 異常値が大きすぎ、、平均値が使えない・・・データ処理がうまくいかない。
  • 的外れにならないように必ず結果数字を確認するようにしているが、それをしていない。
  • 異常値が放置されている

定量的な裏付けとなるデータを採っている企業は少なく、結果数値の確認もしなければ、異常値を放置したままだ、と。つまり、論理的根拠を示せないのは、企業側の問題である、ということなんでしょうか。

そして、待ち時間の異常値の原因は、属人的ミスが多く、管理レベルが低い、、、ことである、と。

この展開、みなさまは納得できますか? 論理的ですか?

どこに問題があるのでしょうか、、。


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