工程が待つ時間が長くなると生産リードタイムは短くなるって、、?

“影武者”って、表現しましたが、もしかすると影武者よりも見えにくいかもしれません。透明人間かな? 素人ならいざ知らず、日本を代表する専門家、コンサルタントにも見えないんですから、、。

見えないけど、確実に存在する。

コロナウイルスみたいに、、。

そうそう、ワクチンみたいのって、ないんですかね。抗体カクテルとか、もねぇ、、。

確実に存在するウイルスに対しては、ワクチンとか抗体ウイルスなんていうのがない時期は、ロックダウンとか三蜜の回避とかマスクの義務化とか、、こういうのもある程度の予防効果はあるんですが、ねぇ、、。

影武者の正体って、見えてないんですが、影武者の動きを抑制する策は一生懸命にやっています。ロックダウンとか三蜜の回避とかマスクの義務化とかに相当することというのは、5Sとかムダの排除、平準化、標準時間の遵守、、等々、、。生産・工場管理の教科書に書いてあります。

はは~ん、だから、「トヨタ生産方式」では影武者は影をひそめたまま、静かにしているのかぁ~。

ロックダウンとか三蜜の回避とかマスクの義務化とか、、でウイルスに打ち勝つことはできません。やはり、ワクチンとか抗体ウイルスとか、ないと、、。

科学的アプローチが必要だ、ということではないでしょうか。

そのためには影武者の素性、特徴、特性などを理解しなければなりません。

「トヨタ生産方式」では影武者がおとなしくしているが、そうでない環境では暴れ出す。「トヨタ生産方式」とそうでない生産環境の違いは何か? いろいろな違いがありますが、ひとつだけ挙げると、、そうそう、「バラツキ」。「バラツキ」です。

「バラツキ」って、なに? 「バラツキ」の定義をキチンとしなければいけませんが、ここでは常識的な捉え方でいいでしょう。「バラツキ」の対語は「一定」とか「固定」とか、、。まぁ、この程度の認識で話を進めます。

生産環境で「バラツキ」っていうと、たくさんあります。需要変動、製品の種類、受注間隔、受注数量、部品・材料の品質、加工・作業時間、運搬・移動時間、注文取り消し、作業員の突然の欠勤、機械の故障、自然災害、事故、、、挙げたらきりがありません。

このようなバラツキをなくすることは至難の業。それを影武者の影響がない程度までにバラツキを抑える「トヨタ生産方式」は特殊、特別と言っていいのかもしれません。一般の企業ではまねできません。バラツキを受け入れ、それと共存するしかない。共存するとなると、

生産ラインにバラツキ、変動が加わるとどうなるか?

ということを理解しておかなければなりません。この設問、簡単そうですが、結構本質的で難しいんですよ、答えるとなると、、。

検討項目を絞ります。生産現場で最も気になる項目の一つが納期。生産ラインでは生産リードタイムでしょうか。生産リードタイムと言ってもいろいろな定義がありますが、ここでは“投入から完成までの時間”としておきます。

生産リードタイムの構成要素は、各工程の処理時間と工程前で待つ待ち時間です。話を簡単にするために段取り時間とか故障とか、作業員の欠勤とか、、そういうイレギュラーは考えないことにします。

処理時間は各工程一定、バラツキもなし。ここで考えなくちゃいけないのが被処理物(以下、ワーク)の投入時間間隔。ここで問題となるのは工程処理時間とワーク投入時間間隔の関係です。

工程処理時間≦ワーク投入時間間隔

のときは、各ワークの生産リードタイムは各工程の処理時間の合計となります。各工程の処理時間が10分一定で、10工程あれば、投入から完成まで(生産リードタイム)100分で完成します。待ち時間は発生しません。

すごく簡単な例ですが、実は、ここにも盲点となりうることがあります。上の条件を

① 工程処理時間=ワーク投入時間間隔

② 工程処理時間<ワーク投入時間間隔

に分けて考えてみます。①と②の違いは何でしょうか? どちらも生産リードタイムは100分ですが、、。そうですね、①は工程の手空きがゼロ、②は工程に手空きが発生します。では、

③ 工程処理時間>ワーク投入時間間隔

ならどうなるでしょうか。生産リードタイムは?、と聞かれても具体的な時間値がわからないと答えられませんね。最初の投入工程(第1工程)で2番目以降のワークに待ちが発生します。第2工程以降ではワークの待ちは発生しません。立ち上がり時期を除いて、工程が待つ時間も発生しません。まとめますと表1のようになります。

表1

なんの変哲もない表です。でも、重要な特性です。

生産リードタイムに注目してみます。生産リードタイムは工程処理時間の合計と待ち時間の合計を加算したもの。どの場合も工程処理時間は加算されますが、待ち時間が加算されるのはワークの待ち時間だけです。工程(機械や作業員)が待つ時間は生産リードタイムには加算されません。

工場が忙しいときは生産リードタイムが長くなり、閑散期には短くなる、、経験済みのことですよね。ディズニーとかコロナワクチン接種とかATMとか、、、みんなこの原理が働いています。

工程が待つ時間は生産リードタイムには加算されない。ここが重要なポイントです。じゃ、工程が待つ時間と生産リードタイムは無関係か、というと、そうじゃない。暇なとき(工程が待つ時間が長いとき)は待たされることなく短時間にことが済む、という関係がある。

くれぐれもお気お付けいただきたいのは、生産リードタイムを長くするのは、ワークの待ち時間であって、工程が待つ時間ではない、ということです。そして、工程が待つ時間が長くなると、確率的にですが、ワークの待ち時間は短くなりますので、生産リードタイムは短くなるわけです。

工程が待つ時間が長くなると生産リードタイムは短くなるって、、?

本当なんですね!

生産管理・工場管理の専門家、コンサルタントの大部分は、この関係を理解していないんじゃないかと思います。月刊工場管理などの専門誌の記事をみても、生産リードタイムの短縮なんていうテーマで持論を展開していますが、的外れというか、テストなら赤点レベルです。日本の生産管理・工場管理のレベルの低さに赤面してしまいます。


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