Flexscheの解説;チコちゃんの反応は?

「Asprova解体新書」をきっかけに、生産スケジューラの機能などについて調べてきました。ザックリと言えば、「固定時間しか扱えない生産スケジューラでは、バラツキを避けられない現実の環境で、実行可能なスケジュールを生成することはほぼ不可能である」、となります。もちろん限定的な条件では使えるケースもあると思いますが、、。

Asprovaだけか? という疑問が湧いてきます。「生産スケジューラー 製品ランキング」をみますと、生産スケジューラ・ヴェンダーって、いっぱいあるんですね。他の生産スケジューラって、どうなってんだろう、、。

生産スケジューラのWebsiteをググっていると

「多様な製造業のニーズに適応するための柔軟性」
「時間軸を重視した工場運営」
「鍵は生産リードタイム短縮」

なんていう文面でひっかかりました。Flexscheという会社です。私が気にしている生産スケジュールの柔軟性とは、主に、時間軸上の柔軟性ですから、もしかしたら、秘策があるのでは、、。ということで、FlexscheのWebsiteを覗いてみることに、、。「解説記事」にいろいろ書いてありそうです。

「Asprova解体新書」で得られた知見をベースに、キーワードを挙げると、生産リードタイム、作業時間、待ち時間、、、そして変動、ゆらぎ、バラツキ。マスタデータのフォーマットも重要ですね。

(1)生産リードタイムと待ち時間

解説記事 生産スケジューラ導入の秘訣
第2回:生産リードタイムを短縮せよ

に次のような説明があります。

生産リードタイムには、正味の作業時間と待ち時間とが含まれます。このうち、通常は、待ち時間の方が圧倒的に長く、また、短縮もしやすいものです。待ち時間は様々な原因によって発生します。それらを明らかにして、影響や効果の大きいものから改善していくべきです。

なお、どこでどのような待ちが発生しているかも、生産スケジューラであぶり出すことができます。 さらに、どのような改善を行えばどのような効果が得られるかも、生産スケジューラを活用すれば定量的にシミュレーションすることができます。

「生産リードタイムは作業時間と待ち時間が含まれ、待ち時間の方が圧倒的に長い」

同感ですね。そして、

「どこでどのような待ちが発生しているか、生産スケジューラであぶり出すことができ、改善効果も定量的にシミュレーションできる」

と。待ち時間を定量的にシミュレーションできるとありますが、、、本当なんでしょうか?

メールしてみました。

「生産スケジューラで、待ち行列現象による待ち時間を分析できますか?」

こんな返事が来ました。

「質問内容の抽象度が高いため、メールにて弊社見解をお伝えすることは難しいと考えております。」

「質問内容の抽象度が高い」って?、ちょっと、”的外れ”っていう感じがします。待ち行列現象を理解していないようで、まともな回答は期待できそうにないようです。

(2)変動、ゆらぎ、バラツキ

待ち時間の発生に関係する要因として、バラツキがあります。変動が大きいと、特に稼働率が高い領域では、待ち時間は急激に長くなります。サイト内の検索機能がありましたので、変動、ゆらぎ、バラツキなどをキーワードにして、検索してみました

解説記事 時間と闘う製造業の生産スケジューリング
第2回 生産スケジューリングで製造業を変える

に次のような説明があります。

現実の世界ではさまざまな変動要因や「ゆらぎ」が不可避なものとして存在するので、生産スケジューラがはじき出した「理論上の納期」をそのまま顧客に伝えるのではなく、安全のためにバッファ時間を加算して回答しましょう。

突発的に発生する変動要因には以下のようなものがあります。発生時に速やかに計画を更新するとともに、「ありうべきこと」としてあらかじめある程度計画に余裕を持たせておくことも必要です。

  • 機械の故障
  • 作業員の欠勤
  • 緊急の飛び込み受注
  • 資材入荷の遅れ
  • 外注先からの納品の遅れ

一方、確率的に常に発生するゆらぎの要因には以下のようなものがあります。計画段階で時間的なバッファをある程度持たせることによって、これらを織り込んでおく必要があります。

  • 気温や湿度による作業時間の変化
  • 調達した原料の品質のばらつき
  • 不良品の発生
  • 人手による不定な作業時間

変動、ゆらぎ、バラツキなどを不可避なものと捉えていることには同意します。で、主な対応策はバッファー時間、余裕時間を入れること、との説明ですが、これは対策にはなりません。ゴールドラットが提唱したDBR(ドラム・バッファー・ロープ)も、バッファー時間を入れて、ボトルネックの稼働率を高く維持しながら納期を守ろうとしましたが、うまくいきませんでした。

また、待ち行列現象による待ち時間発生についての説明はどこにも見当たりません。待ち行列現象による待ち時間って、そこに挙げてある時間変動よりはるかに大きいんですがねぇ~。

(3)どのようなデータを扱うことができるか

マスタデータのフォーマットをみてみましょう。時間値は、他の生産スケジューラと同じで、固定値です。確率変数や確率分布で入れられるようにはなっていません。だとすれば、待ち行列現象による待ち時間は計算できません。

(4)「待ち時間」に関する記述

サイト内の検索機能で、すべての「待ち時間」を検索して、待ち行列現象による待ち時間の説明があるかどうか、調べてみました。残念ながら、そのような説明は見つかりません。

[結論]

Flexscheは、オーダ(ワーク)投入時間間隔や作業時間(処理時間)の変動(ゆらぎ、バラツキ)がある環境で、実行可能な作業開始・終了時刻を指定するスケジュールの生成は、ほぼ、不可能である。

第3回:生産スケジューラの活用方法のバリエーション に活用方法が紹介されています

活用方法1 シミュレータとして
活用方法2 スケジューラとして
活用方法2-1 中央集権型
活用方法2-2 分権型

実行可能なスケジュールの生成ができないとなれば、このような活用方法は、“絵にかいた餅”、、じゃないでしょうか。他の使い方は、、あるかもしれませんが、、。

(5)チコちゃんに叱られないようにしましょう!

解説記事 時間と闘う製造業の生産スケジューリング
第2回 生産スケジューリングで製造業を変える

に次の記述があります。

1990年代には米国でも数多の生産スケジューラのパッケージソフトウェアが販売されていましたが、ほとんどはERPヴェンダーに買収されてしまい、MRPの下位モジュールと位置付けられました。そのため単体製品としての生産スケジューラはあまり出回っていないようです。

一方、日本ではなぜかしらそのような経緯が無かったため、日本の生産スケジューラは独自の進化を続けており、機能的には世界でもトップレベルにあるはずです。それはたぶんおそらくそれは、卓越した日本の製造業のハイレベルなニーズに日々応え続けているからでしょう。

米国で生産スケジューラが出回っていない、というのは同感です。2000年中~後半にかけて、ほとんどなくなったのではないでしょうか。なぜか? 「Asprova解体新書」にその手掛かりが書いてあります。

米国の大学生向けの教科書的な本は、「生産スケジューリングは絶対に無理なのでやめるように」と明言している。(13ページ)

背景を簡単にまとめますと、1990年、米国Northwestern UniversityでMaster of Management in Manufacturing programが始まりました。教科書として用いられたのが、

Factory Physics; Hopp、Spearman著、Waveland Press発行

Factory Physicsでは書名が示すように、生産ラインのメカニズムを物理的・工学的に解析、分析しています。その中で、変動、ゆらぎ、バラツキがある一般的な生産環境では、作業開始・終了時刻を指定する実行可能な生産スケジュールの生成は不可能である、と説明しています。この考え方が定着してきて、生産スケジューラ・ヴェンダーは撤退していったとみるのが妥当だろうと思います。

それも知らずに「世界のトップレベルにある」とは、、。こんなふうに書き換えればいいんじゃないでしょうか。

;一方、日本ではなぜかしらそのような経緯が無 を知らなかったため、日本の生産スケジューラは独自の進化 退化を続けており、機能的には世界でもトップレベル 最低レベルにあるはずです。それはたぶんおそらくそれは、卓越した日本の製造業のハイレベルなニーズに日々応え レベルを劣化させ続けているから ことでしょう。;

チコちゃんに叱られないようにしましょう!


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