生産スケジューラについての愚見をみてか、ある筋から「こんな本があるよ」という連絡がありました。
「Asprova解体新書 生産スケジューラ使いこなし再入門」
著者;高橋邦芳、出版社;日刊工業新聞社 2019年6月27日 初版発行
プロパガンダ的な本であることは、すぐにわかります。著者はAsprovaの代表取締役会長だそうで。どこの生産スケジューラベンダーのWebsiteをみてもそうなんですが、AsprovaのWebsiteをみても、“なんでもできます”的な万能ぶりを、あらん限りの美辞麗句をちりばめて、これでもか、これでもか、、という感じ。思わず、“誇大広告じゃないの?”と。
この本も、その延長線上の本だろうな、と思いながら、、。“まえがき”は飛ばして、“プロローグ”。新入社員が生産管理セミナーに参加するという物語で始まります。著者の工夫の跡が感じられます。
12ページ辺りから“生産スケジューラ”のにおいがしてきます。Asprovaの導入検討や導入プロジェクトで「困ったことベスト10」として、こんなことが書いてあります。
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困ったことベスト10
- 費用対効果(ROI)を示すのが難しかった
- Asprovaを何に活用したらよいか迷った
- 現状業務をどこまで変えたらよいか迷った
- 機能が多過ぎて、何ができて、何ができないのかわかりにくかった
- 希望しているスケジュール結果が出なかった
- マスタ構築、マスタメインテナンス、データ連携が難しかった
- 作業指示をどのように出して、作業実績をどのように取るのかを迷った
- 必須で難しい要件が後回しになって、最後になって困った事態になった
- 社内に抵抗勢力や反対派がいた
- 担当者が交代したら、Asprovaを使わず、Excel管理に戻ってしまった。
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“誇大広告”というイメージはありません。意外と、まじめな本なんだ、という感じです。
続いて、次のようなことが書いてあります。
13ページ
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生産スケジューラの歴史
▶1982年頃、エリヤフ・ゴールドラットの挫折
入社直後、上司である清水部長から、エリヤフ・ゴールドラットの「ザ・ゴール」という本を読むようにと言われ読んだ。ザ・ゴールのあとがき(日本語版P521)には、氏が生産スケジューラを開発し、米国で販売を好調に行うが長続きせず、挫折する。その代りに、ザ・ゴールという世界的ベストセラー小説を書いた。上村講師に聞くと、そのソフトウエアはボトルネックに着目したものだそうだ。しかし、何の理由かはよくわからないが、ゴールドラットはそのソフトウエアの開発を放棄し、ザ・ゴールを執筆したのだ。
米国の大学生向けの教科書的な本は、「生産スケジューリングは絶対に無理なのでやめるように」と明言している。その理由として、マスタデータの作成と維持が困難であることを挙げている。ゴールドラットが挫折したのも、マスタデータが理由だったのだろうか。マスタデータとは、そんなに怖いものなのか。米国はその後、生産スケジューラの失敗の後遺症から立ち直っていない。しかし、現在のテクノロジーなら可能かもしれない。さらに話は続いた。
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いやいや、これはこれは、、生産スケジューラの否定から入っているじゃないですか。
“生産スケジューラは絶対に無理”
会長さん、こんなこと書いて大丈夫ですか。
“マスタデータの作成と維持が困難である”
という理由も現実味を帯びています。
“米国はその後、生産スケジューラの失敗の後遺症から立ち直っていない”
そうなんですよ。一時は、結構な数の米国拠点の生産スケジューラベンダーがおりましたが、今はほとんどいなくなりました。日本には、まだまだ、たくさんの生産スケジューラベンダーがおりますが、、。
米国で見捨てられた生産スケジューラの実態をよくご存知のようです。そして、それを背景にこの書を著したのだとしたら、、
「生産スケジューラって、もしかすると、、もしかするかもしれない」
生産スケジューラの欠陥を知って書いたのであれば、その欠陥を埋める方策なり、解決策なりがかかれているのではないか。米国の生産スケジューラベンダーが解決できなかったことをAsprovaは解決したのではないか。
これが、本当なら、、
「美辞麗句だらけの、誇大広告、、」
などと揶揄したことを、ひれ伏して取り下げ、最大の“称賛”の言葉を贈らなければなりません。
この本に、どんなことが書いてあるのでしょうか。次回、報告します。