Prediction Oneをいじくりまわしてみようと思います。サンプルデータがいろいろあります。その中から、研究テーマに合うのは、
「出荷数予測による生産計画の精度向上」
かな。これを使って、遊んでみましょう。データの概要ですが、表1のように、モデルがMM2、YH15、NK5の3つ。2016年2月から2019年9月まで、月ごとの出荷数があります。3カ月前、4カ月前、5カ月前の出荷数と発売からの経過月数の項目もあります。
表1 サンプルデータ
モデルごとの出荷数をグラフで示しますと図1のようになります。
図1 出荷数推移
このデータを実出荷数と考えてみます。サンプルデータのモデルMM2を使ってみます。これまでは、過去のデータで将来の出荷数を予測するのに、エクセルを使うことが多かったのではないかとおもいます。いくつかのFORECAST.□□□というエクセル関数があります。説明では、“指数三重平滑化などの機械学習アルゴリズム”を使って予測しているとのこと。最近のバージョンでは、もっと簡単で、「データ」→「予測シート」とクリックするだけで予測結果が得られます。
ちょっとやってみましょうか。表2のようにデータ範囲を選択します。
表2 データ選択
次に「データ」→「予測シート」をクリックします。
図2 「データ」、「予約シート」
図3に示すような予測結果が得られます。予測期間とか信頼範囲なんかも設定できます。
図3 予測結果
モデルMM2のデータを使って、出荷数を予測してみます。
・2016年2月~2017年1月のデータで2017年2月~6月を予測
・2016年2月~2018年1月のデータで2018年2月~6月を予測
・2016年2月~2019年1月のデータで2019年2月~9月を予測
図4に予測結果を示します。信頼区間は95%です。
図4 MM2の予測結果。灰色矢印は使用データの範囲。
予測期間が左から数えて1番目と2番目は、「こんなもんかなぁ~」という感じですが、3番目は予測と実出荷数の乖離が大きいようです。でも、全体の傾向からみれば、合っているような気もしますが、、。使うデータで予測結果に差が出てくるようで、これって、当り前といえば当たり前、でしょうか。
では、Prediction Oneで予測してみましょう。Prediction Oneのデモでは先々3カ月の予測設定になっていますので、そのまま先々3カ月を予測することにします。また、Prediction Oneのデモでは3つのモデルを同時に処理していますので、これもそのままの条件にしておきます。但し、予測結果はMM2だけみてみます。
先ず、2016年2月~2017年1月のデータで2017年2月~6月を予測しようとしましたが、
“データ数が少ないため、学習処理が実行できません”
というアラームが出てしまいました。が、
・2016年2月~2018年1月のデータで2018年2月~6月を予測
・2016年2月~2019年1月のデータで2019年2月~9月を予測
は、結果が出ました。予測結果を図5に示します(矢印で示した赤線)。
図5 Prediction Oneの予測結果
Prediction Oneの予測結果は、実出荷数よりも、また、エクセルの予測よりも高く出ました。実出荷数と比べれば、左から2番目は差が大きくなり、3番目は差が小さくなりました。単純な結果ではないようです。
ちょっと、エクセルに戻ります。12カ月のデータではデータ数が少なくて結果が出せませんでしたが、エクセルでは予測できますので、
・2016年2月~2017年1月のデータで2017年2月~6月を予測
・2017年2月~2018年1月のデータで2018年2月~6月を予測
・2018年2月~2019年1月のデータで2019年2月~9月を予測
をしてみました。その結果を図6に示します。
図6 過去12カ月のデータで予測
左から3番目の予測は、過去12カ月のデータを使った予測が過去36カ月のデータを使った場合やPrediction Oneの予測よりも実出荷数に合っているようです。図4と図6は、どちらもエクセル。アルゴリズムは同じですが、使うデータ数(範囲)の違いで、予測結果もだいぶ違うようです。実務でこれをどう使うかは、また別の課題になるんでしょうね。
Prediction Oneで使うデータについて、みておきましょう。エクセルでは使いませんが、Prediction Oneでは、以下のデータを使いました。
・発売からの経過月数
・5か月前の出荷数
・4か月前の出荷数
・3か月前の出荷数
どのデータも入手に問題はないと思いますが、予測にどのようにかかわっているんでしょうね。説明では、「Prediction Oneはソニーが開発しているDeep Learningのオープンソースソフトウェア、Neural Network Librariesを利用しています」とのこと。勉強すればわかるようですが、、。
これまでの統計理論をベースにした予測に加え、AIを利用した予測ができるようになってきました。予測だけではなく、AIは社会のあらゆるところで使える可能性を秘めています。当然、生産管理や在庫管理にも使えそうです。今回、Prediction Oneをいじってみましたが、決して、わかりやすい結果は得られませんでした。だから、AIはダメだ! なんて言うつもりは、毛頭ありません。
AIを使いこなすためには、AIを上回る“人知”が必要なのかもしれません。引き続き、AIの動きを注視していきたいと思います。