計算期間を変えただけで在庫が激減?

手元に、「在庫管理の基本と仕組みがよ~くわかる本」、著者;湯浅和夫他、秀和システム、2019年4月発行があります。この書、なかなかおもしろい。初心者向けのようなんですが、斬新、大胆な在庫論が展開されています。1回、2回では書ききれません。つまみ食い的にあっちへ行ったり、こっちに来たり、、意の赴くままに書中放浪してみたいと思います。

先ず、166ページ~168ページ。(要約)

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「5-10 出荷頻度の低い商品の在庫増はこう抑制する」

出荷頻度が低く、出荷と出荷の間に出荷ゼロの日が多くはさまれる「間欠需要」と呼ばれる出荷パターンを示す商品は、日数管理で在庫を持つと在庫過多になります。この問題に対する簡便法として、「出荷量の計算期間を延ばす」やり方があります。

▶▶出荷頻度の低い商品を日数管理すると在庫過多になる

この本の補充の仕組みでは、出荷ゼロの日はカウントせず、出荷のあった日だけで「1日あたりの出荷量」を計算しています。つまり、出荷頻度は考慮しないで、毎日出荷があっても大丈夫なように在庫を用意するわけです。実際には月に1日しか出荷がない商品であれば、在庫を5日分持ったら、その在庫は5か月分存在することになります。

▶▶出荷頻度を組み込んだ予測を行う

この問題への対処方法は2通りあります。一つは、出荷頻度を織り込んだ必要量計算を行うことです。「1日当り出荷量」だけではなく、一定期間中の「出荷日数」についても予測を行うのです。

5日間の必要量=1日あたり出荷量予測×5日間の出荷日数予測

▶▶出荷量の計算期間を延ばす簡便法

もう1つ、「出荷頻度が落ちてきたら、出荷量の計算期間を延ばしていく」という方法があります。以下、説明していきます。

日次のデータで見ていくと出荷ゼロの日がかなりある低頻度出荷の商品でも、週次で括ってみれば、ほぼ毎週出荷があるということがあります。この場合、「1日あたり」の日次管理をやめて「1週あたり」の週次で管理するようにすれば、低頻度問題は解決します。

商品Aの例でいえば、日次では「在庫5日分」として21.4個を持つ設定になっていたのが、1週分ならば7.5個となるわけです。

図5-16 商品Aの管理を日次から週次に変える

商品A日次

出荷合計  30個/日
出荷日数     7日
1日あたり  4.3個/日
出荷ゼロ日  21日
5日分の在庫 
1日分×5日
=21.4個

商品A週次

出荷合計  30個/日
出荷w数     4w
1wあたり  7.5個/w
出荷ゼロ  0w
1w分の在庫
=7.5個

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ひとつ目の対処方法「出荷頻度を組み込んだ予測を行う」っていうのは、「1日当り出荷量予測」も「5日間の出荷日数予測」も予測。具体的な予測の方法や事例はありませんのでよくわかりません。「予測」×「予測」=「勘」、、。まっ、流しましょう。

二つ目の対処方法。書の説明を簡単にまとめますと、間欠需要パターンのとき、日次(日単位)で計算すると在庫量は21.4個だが、週次(週単位)で計算すると7.5個となり、在庫を抑制できる、と。つまり、出荷パターンは同じでも、出荷量の計算期間を変えると在庫を減らすことができる、ということですね。

計算期間を変えるだけで、在庫量を1/3近く下げることができる、、、。なんと斬新かつ大胆な方法なんでしょう。このような手法があるのかどうか、手当たり次第探してみました。・・・見つかりませんでした。実際の出荷パターンが変わるわけではないんですよね。計算期間を変えるだけですよね。それで、在庫量がガタンと下がる。革命的な大発見。少々大げさかな。でもですねぇ~、直観的、経験的には違和感があるんですよ。

私の常識をベースに、私なりに計算してみます。

先ず、週次計算の方からみてみます。5日分の在庫量を計算してみます。1週間当たりの集荷数は、7.5個/週ですから、1週を7日として5日分は、

5日分の在庫量=7.5個/週×(5日/7日)≅5.4(個)

となります。

では、日次計算では5日分の在庫量がいくらになるか。1日あたりの出荷数は、

1日あたりの出荷数=30個/28日≅1.07個/日

5日分在庫量は、

5日分の在庫量=1.07個/日×5日≅5.4個

日次計算だろうが、週次計算だろうが、5日分の在庫量はどちらも同じ。こちらの方が私の常識には合うんですがねぇ~。

試しに、月次で計算してみましょうか。

5日分の在庫量=30個/月×(5日/28日)≅5.4(個)

日次も週次も月次も、同じ。

「日次で計算すると、5日分の在庫量が21.4個、週次で計算すると7.5個となる」

V.S.

「日次も週次も月次も、5日分の在庫量は同じ」

どちらが正しいんでしょうか? 本書の著者諸氏(3人の共著)は物流・在庫の専門家。関連書籍もたくさん出しています。「活字」になっている「専門家」の記述を信頼する人の方が多いと思います。みなさまはどのようにお考えでしょうか。


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