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No.69 生産管理とスケジュールの関係を見直す

生産管理の基本は、生産計画がきちんとできていることだ、と教科書に書いてあります。生産計画を基準に、それに沿って生産活動が行われているかどうかをみて、それから外れるような場合は是正処置をとる。簡単に言えば、管理とはそんなことなんでしょう。生産現場で生産活動を行うためには、さらに詳しいスケジュールが必要になりますが、スケジュールは生産計画がないとできませんので、やっぱり、生産計画が基準とうことでしょうか。

生産管理が抱える慢性的な問題は、実は、この生産計画や生産スケジュールに絡む部分に集中しているように思います。どのような問題か? いろいろあるんですが、簡単に言えば計画と現実の乖離。計画通り注文が来ない、計画通り部品が入らない、計画通りの時間で処理が終わらない、、、挙げたらきりがありません。程度の差はあれ、このような状況になっている企業は、そうでない企業よりははるかに多いんじゃないでしょうか。

そのような企業は、「管理が悪い」というレッテルを貼られます。そういう会社の多くは、XX管理、YY管理、ZZ管理、、と管理項目を管理するのも大変なぐらい、管理項目はいっぱいあります。が、計画と実際の乖離がなくなることはありません。コンサルタントに頼んで管理レベルの向上に努めても、一時的にはよくなりますが、時間が経つと元の木阿弥。「やっぱり、あなたの会社はダメですね」って言われ続けます。それでも何とかしようとするんですが、管理項目が増えるだけで、計画と実際のギャップは空いたまま。こんな状態が何十年も続いているんですよね。

トヨタ生産方式の影響も大きいかも知れません。トヨタ生産方式も生産計画基準です。トヨタの業績を背景に、トヨタの生産管理はお手本として定着してきたように思います。それに異を唱えることはできません。トヨタは生産計画通りものができてますよ、と言われたら反論のしようがありませんから、、。

生産計画なしでものをつくっている工場はあるんでしょうか。実は、いっぱいあります。生産計画通りつくろうとしてもできない企業も、実は、生産計画なしでものをつくっているのと大差ありません。だから、計画なしでものを生産している企業はたくさんあるんです。

町の工場(こうば)のおやじさんは、何をいつどのように流せばいいのか、すべて頭の中にありますので、生産計画なんていらない。ちゃんとした“理”があります。でも、規模が大きくなると、それも無理。生産管理のもとになる生産計画がいい加減では管理のしようがありません。でも、ですよ。業績は受注の入り具合で赤字、黒字を繰返し、納期遵守率はいまいち、生産性に関連する経営指標は低空飛行。あまり“ぱっと”しない企業なんですが、もう50年以上も続いてる。それなりに存在価値はあるわけですが、生産管理はいまいち。こんな企業にとって、生産計画とは、何なんでしょうね。ない方がいい? そう考える人が社内には結構いるんですって。だったら、やめたら。でもやめられない。おたくの会社、生産計画がそんな位置づけになっていませんか。

生産計画を基準とした生産管理ができているのかどうか、一度、立ち止まって、考えてみる必要がありそうですね。生産計画を基準とした生産管理ができる企業はどのような企業なのか、できない企業はどのような企業なのか。できない企業がいくら頑張って生産計画を基準とした生産管理をやろうとしても、できないんじゃないでしょうか。それは高等な理論などなくても、歴史をザット振り返ればわかることです。

生産計画を基準とした生産管理をやろうとしてもできない企業とは? いやいや、生産計画を基準とした生産管理ができる条件を調べた方が早いかも。生産計画ができて、それに従ってスケジュールが立てられ、生産が行われる。生産活動はスケジュール通りに行われなければなりません。でなければスケジュールの意味はありませんから。つまり、生産計画(生産スケジュール)と実行結果は同じでなければなりません。だとすると、ある期間の生産計画は、その間に来る注文には応えず、固定されていなければならないことになります。そして、作業時間など生産条件も計画と実際の乖離は極小に抑えられていなければなりません。

まとめると、生産計画を基準とした生産管理ができる条件とは、
*見込生産である
*ある期間、生産計画を固定する
*生産条件(作業時間など)の計画と実際の乖離は極小(実際のバラツキが極小)

これに該当しない企業は生産計画を基準にした生産管理はできない、と考えた方が良さそうです。そういう企業が圧倒的に多いというのは、“納得”。じゃー、どうすればいいの? まぁ、ことはそう簡単ではありません。じっくりと考えなければならないようです。

大量生産が始まった19世紀から今日まで、経験と様々な理屈を組み合わせて築き上げられてきた生産管理の方法がうまくいかないっていうんです。すぐに、こうすりゃいいよ、っていうわけにはいきません。これまでのやり方がうまくいかないということがわかっただけでも前進、と前向きに考えなきゃ。

さて、どうしましょうか。生産計画、生産スケジューリングが機能しないんです。実は、こんなことは、ズ~ッと以前から分かっていたことですよ。これまで、何もしてこなかったわけではありません。どんなことをしてきたか、って? 前述しましたが、トヨタを見習え、というのも一つ。APS(先進的スケジューリング)というのもありました。APSって、どんなものか、西岡靖之著「APS」から抜粋してみます。

題名;APS 副題;先進的スケジューリングで生産の全体最適を目指せ!
著者;西岡靖之
発行所;日本プラントメインテナンス協会
発行日;2001年12月7日

<抜粋>
変化する市場環境、変化する生産現場、変化するさまざまな技術、これらの変化に追随していくためにはどうすればいいか、この答えは、変化に対応可能な生産の仕組みをつくり、変化が起こるつど、計画を常につくり直して対応する俊敏な生産形態をつくりあげることになる。(p68)

このような要求を満たしつつ、ローリング計画をより実践的なものにするためには。やはりAPSによる詳細なスケジューリングが必要となってくる。(p70~71)

スケジューラーを用いることで、生産設備ごと、作業者ごと、作業やオーダーごとの詳細な開始、終了時刻が計算できるようになったからである。スケジューラーを利用して、直接それらの詳細な作業指示を発行することもできれば、将来の生産現場の状況を詳細にシミュレーションし、必要な対策を事前にとることも可能になったのである。(p89)

これを読んでみると、状況変化、変動に追従して生産スケジューリングができますよ、って書いてある。つまり、どのような生産環境でも短時間に生産スケジュールをつくることができますよ。だから、従来通り、生産計画・生産スケジュールを基準とした生産管理ができます。ということなんですね。これが実現すれば画期的なことですよね。

2001年にこの書が出て、PSLXコンソーシアムという推進組織も立ち上がりました。書に書いてるようなことは起きたのでしょうか。残念ながら、何の進歩ありません。APSが掲げた目標は机上の空論だった、という結論を急ぐ必要はありませんが、、。

変動がある環境でも何とかして生産計画基準の生産管理を行えないか、様々な工夫が行われてきましたが、結局、大した成果は出ず、行き詰まっているのではないかと思います。そろそろ、変動のある生産環境では、生産計画基準の生産管理をあきらめる時期にきているのではないでしょうか。

変動のある生産環境では、生産計画基準の道はない、となれば、別の道を探さなければなりません。道を探すにしても、可能性のある方向に向かわなければなりません。解決すべき課題領域がなんであるかがわかれば、その方向性はみえてきます。2つの課題領域が浮かび上がってきます。それは、「受注順生産問題」と「処理時間変動問題」です。なんだ、それは? 聞いたことありませんよね。えぇー。始めて使う言葉ですから、、。