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No.61 流動インベントリーと実在庫の関係

STIC発注方式では、欠品しないように流動インベントリー(STI)を確保し、補充発注のトリガーは需要を基準とします。流動インベントリー(STI)は実在庫、発注残、発注待ちを包括したものです。図1を参照ください。

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図1 STIC発注方式の概要

ここで気になるのが、実在庫の量。流動インベントリーの大きさ(SSTI)よりは小さいことはわかりますが、どのぐらいなのか、SSTIと実在庫にはどのような関連があるのか、、。実在庫量が倉庫の広さを決めるのに必要な情報ですので、在庫管理上、気になるところです。ということで、今回は流動インベントリー(STI)と実在庫の関係を調べてみることにします。

流動インベントリー(STI)の構造はいたって簡単です。主なものは発注待ちと注残、それに実在庫です。発注待ちは定量、定期、定件など、まとめて補充発注するときに発生する出荷から発注までの待ち時間です。定量、定期、定件の数値が大きくなれば待ち時間も長くなり、発注待ちの量も多くなります。注残は発注から入庫までの状態ですから、納入リードタイムが長くなればその量も多くなります。で、実在庫は? そうですね。流動インベントリーの大きさ(SSTI)から発注待ちと注残を引けばいいわけです。

変動がないときは簡単なんですが、ここでのメインテーマは変動があるときの実在庫はどうなるか、です。かなりややこしいので、シミュレーションで確認してみたいと思います。

納入リードタイムを50、250、350(時間の単位はなんでも構いませんが、同じ単位である必要があります)のときの流動インベントリーの大きさ(SSTI)と実在庫の分布を調べてみました。条件は次の通りです。

*受注到着間隔(Ti)=10、その変動係数(Ci)=0.25
*受注1件の受注数(Q)=12、その変動係数(Cq)=0.25
*発注方式;定量、定量数(Oc)=96
*納入リードタイム;50、250、350、その変動係数Cp=0

シミュレーション結果の1例を図1に示します。納入リードタイム(Tp)が長くなると、注残が増えますので、流動インベントリーの大きさ(SSTI)も大きくなります。しかし実在庫は、多少大きくなりますが、SSTIほど大きくはなりません。

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図1 納入リードタイム;50、250、350での流動インベントリーの大きさと実在庫分布

次に、受注間隔の変動係数(Ci)を振って、流動インベントリーと実在庫がどうなるか調べてみます。条件は次の通りです。

*受注到着間隔(Ti)=10、その変動係数(Ci);0.25、0.7、1
*受注1件の受注数(Q)=12、その変動係数(Cq)=0.25
*発注方式;定量、定量数(Oc)=96
*納入リードタイム=250、その変動係数Cp=0

図2にシミュレーション結果の1例を示します。流動インベントリーも大きくなり、実在庫の分布も広がります

STI_zaiko

図2 受注間隔の変動係数;0.25、0.7、1での流動インベントリーの大きさと実在庫分布

納入リードタイムが変動する場合はどうなるでしょうか。次の条件でシミュレーションしてみました。

*受注到着間隔(Ti)=10、その変動係数(Ci)=1
*受注1件の受注数(Q)=12、その変動係数(Cq)=0.25
*発注方式;定期、発注サイクル(Ty)=80
*納入リードタイム=250、その変動係数Cp;0、0.32、0.53

シミュレーション結果の1例を図3に示します。この場合も、流動インベントリーも実在庫も大きくなります。Cp=0.53では実在庫の最大値と流動インベントリーの大きさ(SSTI)が同じになっています。

STI_zaiko

図3 納入リードタイムの変動係数Cpを振ったときの流動インベントリーと実在庫分布

実在庫の分布を算出する簡易式は次のようになります。

[定量発注方式]

cycle_zaiko

zaiko_bunsan

zaiko_heikin

saidai_zaiko

(但し、最大在庫>SSTIのときは、最大在庫=SSTI)

[定期発注方式]

saikuru_zaiko

在庫分散、在庫平均、最大在庫は定量発注方式と同じ

[定件発注方式]

cycle_zaiko

在庫分散、在庫平均、最大在庫は定量発注方式と同じ

記号の説明

Np;納入リードタイム間の受注件数の平均
Q_bar;受注件数1件の受注数量の平均、Ci;Qの変動係数
Ci;受注間隔の変動係数
Cp;納入リードタイムの変動係数
Oc;定量発注数量
Ny;一定発注間隔(発注サイクル)
Nc;一定発注件数
α;安全係数

流動インベントリーと実在庫の関係を調べてみました。この結果から、いろいろと面白いことがわかってきます。次回に、紙面を改めて、、、