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No.44 定期不定量発注;流動インベントリーの大きさ

消費量を基準とした定量不定期発注方式での流動インベントリーの大きさについて考えてきました。では、定期不定量発注方式(以下、消費基準定期発注)ではどうなるかについて検討してみたいと思います。消費基準定期発注は文字通り、一定の時間間隔で消費した量(出荷した量)を発注する方法です。その時間間隔を発注サイクルTyと呼んでおきます。発注量の決め方はいたって単純で、従来の定期発注での発注量の決め方とはちがいますので、ご留意ください。

消費基準定期発注の流動インベントリーの平均と分散は次のようになります。

流動インベントリーの平均; dr

dr        (式1)

流動インベントリーの分散;Vdr

vdr

vdr        (式2)

ここで、
tp;納入リードタイム平均、Cp;納入リードタイム変動係数
   Ti;受注間隔平均、Ci;受注間隔変動係数
np;納入リードタイム間の受注件数平均 ( np)、Ty;発注サイクル
ny;発注サイクル間の受注件数平均 ( ny)
q;量/件(受注件数1件当りの受注量)平均、Cq;量/件の変動係数

消費基準定期発注でのDrとVdrは、補充時間がTyだけ長くなった、と考えればいいと思います。従来の在庫管理でも安全係数を求めるときに(納入リードタイム+発注サイクル)の時間間隔でのバラツキを考慮してますが、それと同じです。

流動インベントリーの大きさは (式1)と (式2)を使って、次式で求めます。

ryudo_zaiko        (式3)

従来の定期発注との比較

先に少し触れましたが、従来の定期発注と今検討している消費基準定期発注で異なる点は発注量の決め方です。従来の定期発注では、設定した発注サイクルに対して発注量は次の式で計算すると説明されています。

発注量=(調達リードタイム+発注サイクル)の需要予測量-発注残-在庫量+安全在庫

安全在庫=安全係数x ru-tox単位期間需要量の標準偏差

需要の予測方法は様々な方法で行われます。市場情報、営業情報、過去のデータなどをもとに統計理論を用いるのが一般的ですが、予測者の心理状態なども影響します。従って予測をシミュレーションすることは極めて困難ですが、ここでは一例として、(調達リードタイム+発注サイクル)間の需要量の分布からランダムに抜き取った値を需要予測量とすることにします。

一方、消費基準定期発注では、発注サイクル間に来た受注量と同じ量を補充発注します。

この違いが流動インベントリーや在庫量にどのような影響があるかを調べてみたいと思います。次の条件で検討します。
受注間隔Ti=4時間、変動係数Ci=1
量/件Q=10個、変動係数Cq=0.25
調達リードタイムTp=168時間(7日)一定

二つの方法で1,000日間、シミュレーションしてみました。図1は両者の在庫の推移です。図2はその分布です。(図中、検討中定期発注は消費基準定期発注を指す)

zaiko

図1 倉庫在庫の推移

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図2 倉庫在庫の分布

両者とも欠品を起こさない最少の在庫です。明らかに従来の定期発注より消費基準定期発注の方が在庫は少なくて済みます。この違いは、需要予測をするか、発注サイクル間に来た受注量をそのまま補充発注するか、だけですが、従来の定期発注で行う需要予測のバラツキが在庫量を増やしているわけです。

図3と4に両者の流動インベントリーの推移を示します。従来の定期発注では流動インベントリーがでこぼこしていますが、消費基準定期発注では一定です。

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図3 従来定期発注の流動インベントリーの推移

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図4 消費基準定期発注での流動インベントリーの推移

図5は発注サイクル(日)に対する流動インベントリーの大きさを示しています。直線は前述した流動インベントリーの大きさを求める計算式で算出した値です。良く一致しているのが分かります。

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図5 発注サイクルに対する両者の流動インベントリーと計算式結果

まとめ

まとめますと、
*(式3)で求めた流動インベントリーの大きさとシミュレーション結果とはよく合う
*需要予測の誤差(実際とのズレ)は流動インベントリーを大きくし、でこぼこにする。
*発注サイクル間の受注量をそのまま補充発注することで、予測誤差を少なくできる。
*そうすることで、流動インベントリーの大きさを一定に保つことができる。
*常に一定である流動インベントリーは在庫管理上、いくつかの利用価値がある。

「需要予測せずに受注量をそのまま補充発注する方が、簡単で、在庫量が少なくて澄むのだと、、。そんなに簡単でいいのか? 需要が増えたり減ったりしたらどうするのだ!」 という疑問をお持ちの方も多いかもしれませんので、補足しておきます。需要予測を行わないわけではありません。需要予測の使い方が従来と異なるということです。需要予測は補充発注ごと毎回行うのではなく、市場状況や顧客情報など、比較的長い時間間隔で需要がどうなるかをみて、流動インベントリーの大きさを変更します。流動インベントリーが市場とつながるリンクであり、インターフェースの役割を担いますので需要に応じて定期的に流動インベントリーの大きさを調整するわけです。この辺の話については後で詳述したいと思います。